『わたしは食べるのが下手』は、給食が苦手な中学1年生・葵を中心に、食に悩みを抱えるクラスメイトたちが織りなす物語です。
会食恐怖症、摂食障害、宗教や家庭の事情──一見「食べない理由」の裏には、誰にも言えない心の葛藤が隠れています。
「ちゃんと食べるって、誰にとっての“ちゃんと”なんだろう?」と問いかけながら、相手の立場に立って考えることの大切さを優しく教えてくれる一冊です。
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概要
『わたしは食べるのが下手』は、学校給食という一見「当たり前」に見える日常を通して、多様な生徒たちの“見えない苦しみ”や“心の成長”を描いた中学生向けの小説です。
主人公の葵は、人と一緒に食べることに強い不安を感じる「会食恐怖症」を抱えていて、給食の時間が苦痛で仕方ありません。ある日、保健室で出会ったのは、摂食障害に悩む咲子というクラスメイト。さらに、宗教上の理由から給食を自由に食べられないラマワティ、貧困によって食事そのものが十分でないコッペなど、さまざまな事情を抱えた仲間たちと出会っていきます。
この物語の魅力は、「見えにくい理由に耳を傾ける」ことの大切さに気づかせてくれる点です。
「ちゃんと食べるのが普通」「残さないのがマナー」――そんな“正しさ”が、時には誰かの心を傷つけているかもしれない。そう気づいたとき、読者自身もまた、優しさや思いやりの意味を問い直すことになります。
✍️ 読書感想文を書くときのヒント
読書感想文を書くときは、次の3つのポイントを意識すると、書きやすくなります。
① 自分自身の食に関する経験と重ねる
例:「僕は食べることが好きだけど、給食が苦手な子がいると初めて知った」など。
② 登場人物の行動や気持ちに共感した場面を書く
咲子、ラマワティ、コッペなど、自分が特に印象に残った人物に注目しましょう。
③ この本を読んで気づいたこと・これから自分がどうしたいかを書く
「困ったら相談する」「誰かが残しても理由を聞ける人になりたい」など、自分の成長のきっかけにすると◎。
読書感想文コンクールの課題図書にも選ばれているこの本は、「ただの食の話」では終わりません。
「ふつうって何?」と問いかけながら、読者それぞれの心に静かに寄り添ってくれる、そんな一冊です。
読書感想文の例
角砂糖知らん世代
〇年〇組 〇〇〇〇
僕は甘いものが好きだ。正確に言えば「それなりに」ではなく、「どうかしてるほど」に好きだ。プリン、シュークリーム、チョコレート、たい焼き、そして神の領域に片足を突っ込んだパフェ。もしも人生最後の晩さんを選べと言われたら、僕はたぶん、迷わずスイーツビュッフェを選ぶと思う。しかも一周で終わらず三周するタイプ。
そんな僕だけど、学校では「ブラックコーヒー派」を装っている。友達に「砂糖入れるの?」と聞かれて、「いや、入れないね。苦いのがいいんだよ」なんて背伸びして言ったりする。でも本当は家でコーヒーを飲むとき、スティックシュガーを二本ドサッと入れて、その上から牛乳を注いで、「もはやカフェオレというよりデザートじゃないか」というレベルに仕上げている。罪悪感? ない。むしろ誇らしい。
ちなみに祖父は昔、「おやつと言えば角砂糖だった」と語っていた。僕はその時、あの昔の喫茶店に置いてある、白くて四角くて、手でつかむとホロッと崩れそうなあれを思い浮かべた。正直、今の僕には角砂糖単体を食べる勇気はない。でも、昭和の子どもたちはそれを宝物のように味わっていたらしい。それを聞いて思った。時代によって「甘いもの」の価値も、形も、付き合い方も違うんだなと。
そんな「甘いもの大好き人間」の僕が『わたしは食べるのが下手』を読んで、不意打ちを受けた。主人公の葵は、食べることに悩みを抱えている。なんと「会食恐怖症」だ。つまり、人と一緒にごはんを食べるのが怖いという。最初は「え?なにそれ?なんで?」と思った。給食って、デザート出るし、なんなら僕にとっては一日のハイライトだ。でも葵にとっては、緊張と不安とでお腹が固まってしまう時間だった。
そんな彼女が出会うのが、保健室登校をしているクラスメイトの咲子。彼女は摂食障害を抱えていて、過食しては吐いてしまうというつらい状態だった。お菓子やジャンクフードを大量に食べたあと、罪悪感や苦しさで吐いてしまう。でも、咲子はただの「食いしん坊」なんかじゃない。心がいっぱい泣いていたんだと思う。
さらに登場するのがラマワティ。イスラム教徒で、宗教の教えから食べられない食材がある。ラマワティは別にわがままを言っているわけじゃない。でも、誰も事情を知らずに「なんで食べないの?」と聞かれるたびに、心が削れていく。周りの無理解が、優しさを着てないナイフのように彼女を傷つけていた。
そして、僕の胸に一番ずんときたのが、コッペというあだ名の男子だ。彼の家はとても貧しく、お父さんは精神的な病気で働けず、お母さんは妊娠中。彼にとって給食は、贅沢でもなんでもない。「唯一のちゃんとしたごはん」だったのだ。たぶん、甘いデザートなんて、給食に出るときぐらいしか食べられないんじゃないかと思う。僕だったらその一口を、きっと大事にしすぎて一時間くらい眺めてから食べると思う。授業中になってしまうが彼のことを考えたらやむを得ない。
こんなふうに、登場人物たちはそれぞれに「食」に関する深い悩みや事情を抱えていた。でも、外から見ただけでは誰にもわからない。例えば僕が咲子を見たとしても、「お菓子好きそうだな」としか思わなかったかもしれない。ラマワティに「どうして残すの?」と聞いてしまったかもしれない。コッペの行動を「がっついてるな」と笑ってしまったかもしれない。でもそのどれもが、心の中の苦しさから来ていたのだ。
この本は、僕に「食べることって、ただお腹を満たすだけじゃないんだ」と教えてくれた。そして何よりも、「自分の物差しで人をはかるなよ」と言われた気がした。みんな違って、それでいい。
甘いもののように、人の心にもいろいろな味があると思う。優しさはバニラのようにふんわりしているし、誤解や偏見はビターなカカオのように苦い。でも、どんな味も知っていればこそ、本当の意味で誰かを思いやれるんじゃないかと思った。葵たちのように、それぞれ違う背景を持った人がいるからこそ、世界はカラフルで、時々ほろ苦くて、でもときどきすごく甘いんだ。
そして僕は、甘いだけの人生では、ダメだと気づきました。大切なのは、自分ひとりで悩みを抱え続けるのではなく、周りの人と協力して、少しずつでも前に進むこと。葵が橘川先生に助けてもらったように、困ったときには勇気を出して相談する。そして僕も、もし友達から何かを相談されたときは、全力で解決の方法を一緒に探し出すようにしたい。スイーツだけじゃなく、人の気持ちにもちゃんと向き合える、そんな人間になっていこうと思う。
タイトル案
タイトル案
・食べることの意味
・心の声に気づく時
・僕が見つけた違い
・給食と優しさの形
・それぞれの食卓
・共感が生まれる時間
・沈黙の理由を知る
・「ふつう」を考えた日
・相談する勇気を持つ
・心に寄り添うということ
・苦手を否定しない社会へ
・見えない理由に気づく
・君の一口が語るもの
・わからないを知る勇気
・ひとさじの理解から
Youtube
終わりに
今回は、僕の“甘党キャラ”から書き出すという、ちょっとユニークな入り方をしてみました。
感想文というと、真面目なトーンで始めなきゃいけないと思いがちですが、自分の趣味や日常、ちょっとしたクセなどの“個性”を出してみると、読み手の目を引くだけでなく、本のテーマと意外なつながりを見つけやすくなります。
『わたしは食べるのが下手』は、ただの食事の話ではなく、「人にはそれぞれ事情がある」「見えない苦しみがある」ということに気づかせてくれる物語でした。だからこそ、読む人自身がどんな価値観や背景を持っているかによって、響き方も変わるのだと思います。
読書感想文を書くときには、素直な気持ちや自分らしい視点を大切にしてみてください。
「僕ならどう感じる?」「この場面、もし自分だったら?」――そんな問いかけから始まる感想文は、きっと読む人の心にも届くはずです。
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