カラフル 著:森絵都
読書感想文 原稿用紙5枚分2000文字です。
中学生の日常の中の、悩みや葛藤が描かれている小説です。
ホームステイとして他人の魂が中学生の中に入り、彼を客観的に見つめなおします。他人の家族と一緒に、転生先の本人として生活するが、家族に対して異様に執着することへの違和感が見事に回収されて感動する物語。
本の紹介
「おめでとうございます! 抽選にあたりました! 」
生前の罪により輪廻のサイクルからはずされた
ぼくの魂が天使業界の抽選にあたり、
再挑戦のチャンスを得た。
自殺を図った中学三年生の少年、小林真の体にホームステイし、
自分の罪を思い出さなければならないのだ。
ガイド役の天使のプラプラによると、父親は利己的で母親は不倫しており、
兄の満は無神経な意地悪男らしい。
学校に行ってみると友達がいなかったらしい真に
話しかけてくるのは変なチビ女だけ。
絵を描くのが好きだった真は美術室に通いつめていた。
ぼくが真として過ごすうちに、
しだいに家族やクラスメイトとの距離が変っていく。
モノクロームだった周囲のイメージが、様々な色で満ちてくるーー。
読みやすくて、面白い本です。
中々自分を思い出せない主人公、最後一気に自分の罪を思い出します。
参考にする方は上手く切り取ってください。もちろん丸写しOKです。
※商業利用では使わないようにお願いいたします。(売ったり、講義に使うなど) ©がとーほーむ
感想文の例
罪と救い、魂のホームステイ
○年○組 ○○ ○○
大きな過ちを犯し死んだ主人公の魂が、天使のプラプラと出会うところから始まります。このプラプラは、死後の魂のシステムを教えてくれます。通常、罪を犯して死んだ魂は輪廻のサイクルから外れるとされていますが、主人公は特例として、抽選に当たり再生のチャンスを得ます。この再生は「ホームステイ」という形を取り、主人公は中学3年生の小林真の体に魂として宿ります。
大きな過ちを犯した魂が与えられる「再生のチャンス」は、真として生活する中で自分の罪を思い出さなければ魂が消滅してしまうことです。人間の過ちや後悔、そして罪や過ちからの許しや救いを見つけることなのです。
プラプラを通して、死後の世界のシステムやルールを知ることができ、死という普遍的なテーマを新鮮でユニークな視点から見ることが出来ました。
また、「ホームステイ」という言葉の選択も独特で、私が理解していた「ホームステイ」は、異文化の中での短期間の生活体験でしたが、この小説の中での「ホームステイ」は、他者の体、小林真という中学生の体と心の中に一時的に滞在することを指しています。過去の記憶がない自分の魂にとってホームステイという言葉がしっくりと馴染みました。
この設定によって、自らの過去の過ちや後悔、そして人生の意味や価値について深く考えさせられます。
小林真の日常を通じて、主人公の魂が自らの過ちと向き合い、成長していく過程を追体験することで、私も自己反省や、自分の考えや言動について省みる時間を持つことができたように感じました。
小林真は、平凡な家庭の中で父、母、兄とともに生活している少年です。しかし、この家庭は外見とは裏腹に、様々な問題を抱えています。当初、プラプラの情報として、母は不倫をしており、父は自己中心的であり、真自身も内向的で低身長を気にする少年という情報を得ます。しかし、ホームステイを通じて、真の日常や家族の本音、学校生活など、真が抱えている様々な葛藤や喜びを知ることとなります。
特に、真の初恋の相手である桑原ひろかは、重要な存在です。彼女の援助交際現場を目撃したことにより、真の自殺の一因になったからです。
主人公の魂は、家族や友人、学校の日常に触れる中で、真の持っていた視点や感情、そして前世での真の過ちについての理解が深まっていきます。
その他、学校では美術部の佐野唱子が真の気になる存在であり、彼女を通じて真が感じている孤独や葛藤が浮き彫りとなります。
唱子は、真の表面的な性格や行動だけでなく、彼の魂の奥深くにある感情や価値を敏感に察知する存在として描かれています。
真が久しぶりに学校へ行き、ホームステイしている魂が行動する中、他の生徒たちは彼の外見や行動だけを見て、少し明るくなった程度に思っています。しかし、唱子は違いました。別人だと言ってくるのです。なぜ、彼女がそこまで見抜くことが出来るかというと、真が気付いていなかっただけで、昔からずっと真のことを見てきたからです。唱子がいじめられていた時、真もいじめられていて、でも、真は辛い環境の中でも絵を描くことで自分を保つことが出来ていることに憧れのようなものを抱いていたからです。彼女は真が描く絵の中に、彼の内面の葛藤や感情、さらには彼の持つ潜在的な才能や魅力を感じていました。
唱子のように、他人の内面や潜在的な価値を見抜くことができる人は、私の生活の中でどれだけいるかわかりません。このエピソードを通して、他人の表面を超えて心の奥深くを理解し、受け入れることの大切さを教えてくれました。
カラフルというタイトル通り、多彩な人間関係や心の動きを描いています。
当初の情報や印象とは異なる、真の家族や友人、そして自身の過去の過ちに対する新しい視点や気づきが次第に明らかになることで、人の心や人間関係の「色」が変わって見えてくるのです。この小説を通して、人の心の中には様々な「色」が存在し、それが複雑に絡み合って、人の心を形成していることを感じることができました。
私は、他者の立場や背景をもっと深く理解し、寛容な心で接することを心がけます。過去の過ちや後悔、そして自らの弱さを受け入れることの重要性を学びました。日々の出来事に感謝する日常を作ること、障壁や困難に直面しても前向きに取り組む姿勢、そして、人との繋がりや絆、家族、友人、そして新しい出会いに感謝し、大切にすることを心がけて生活していこうと感じました。
終わりに
セリフが段落になっているので、
本文のページ数が245ページでしたが直ぐに読み終えることが出来ました。
内容も面白いです。ホームステイして約4か月間の出来事ですが、
受験シーズンが重なり、読みながらも焦りのようなものを感じました。
母親の不倫、初恋の女の子の援助交際、それが勘違いであって欲しいと
願いましたが・・・
誰しもが苦難に向かい合います。逃げるのではなく、受け入れる。
そして、立ち向かい乗り越える。
新しい本当の自分を見つけて、一歩踏み出す。
そんな気持ちにさせてもらえる本です。
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